top of page
Vol.45 やまももを探して。
雨が降る季節になると、高知がそわそわしています。ほんの2週間かそこらのお楽しみ、やまももの紅い実が、どこかにないだろうかと。甘酸っぱい、太陽の光を吸ったルビーのような実は街路市にも顔を出すし、その時だけの良心市も現れたりします。
潮気をふくむ空気が好きなのか、海ぞいの山に多く、精気の強そうな、そして古い種族のような姿の木です。売っているものは粒が大きめの明るい赤、街路樹に植えられているのは小さくて黒みがかった赤が多いでしょうか。街路樹にも実をつけている木がたまにあります。足もとに赤黒い実が落ちてつぶれているのが目印。
甘さもいろいろで、よく熟した甘いのから、甘酸っぱいの、酸っぱいの、振り塩をしてなんとか甘みを感じるもの、というように選んでつまみ、食べすすむのが、「やまももの選(よ)り喰い」です。実のほとんどは種で、果肉は少ししかありません。それでも、満足。紅い果汁が衣服についたりすると、染まって落ちなくなるけれど、怒る気にはなれません。
やまももを口にいれるのは、幼いころ遊んだ思い出を口にするようなもの。子どもの自分に再会するような時間。あわただしく雨の季節が過ぎてしまい、今年は出会えなかったと気づく年には、翌年への想いが深まるのです。
2015-05-23 配信
bottom of page