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 Vol.47 ひろがる高知
 
 取材の仕事で、県内各地へ出かけています。そうすると、川に 沿って上流の、まだ訪ねたことのなかった集落を知ったり、回ったことのなかった半島に集落があることを知ったりします。頭のなかで、高知県全図の一部分が周囲とつながり、奥行きが生まれ、ひろがっていくのを感じるのです。そこに住んでいる人の姿とともに。

 

 いけどもいけども、いまの高知の全体像を知ることは、簡単なことではありません。細長い地形は起伏に富んでいて、まるで山々によって折りたたまれていた「飛び出す絵本」のように、新しい集落が立ちあらわれてくるのです。何十年かかっても、まだ踏みいれたことのない地域はあって、そうしているうちに、以前から知っていた集落も変化 しています。

 

 高知県の形は、シンプルにみれば、かまぼこを切ったような、あるいはバウムクーヘンを切ったような細長いアーチ型、といえばいいのでしょうか。細長い扇形、ともいえます。高知市がまんなかからやや西のあたりにあって、全体は東西に長く、山と海の標高差が大きく、西と東では話す言葉もずいぶん違います。川筋に沿って幾重にも重なる山々のふところに点在する集落は、いったいいくつあるのでしょうか。いまの風景からは知るよしもない、栄枯盛衰のかなたを想います。

 

2015-11-02 配信

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