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Vol.53 甘いお赤飯
高知は東西に長く伸びているので、東と西では、話し言葉にも食文化にも、いろいろな違いがあります。食文化の地域性を象徴するもの、とわたしが勝手に位置づけているのが、お赤飯の味です。県西部、幡多のお赤飯は、甘い味つけをします。
県中部は一般的なお赤飯なので、初めて幡多のお赤飯を口にしたひとは、甘くないはずのものがなぜ甘いのかが理解できずに、とまどいます。ごはんそのものが甘いだけでなく、甘く煮た金時豆が入っていたりします。お赤飯はお祝いごとのごちそうだから、砂糖が貴重だった時代を思えば、むしろ甘くするのが自然な発想かもしれません。
そして、幡多のひとにとっては、甘くないお赤飯というものを口にするたび、なぜ味がしないのか、残念に思ってしまうのだという声を聞きます。味がないうえに、ごま塩を振ったりするなんて、信じがたいことでしょう。
ふしぎなことに、これだけひとが行き来しているにもかかわらず、幡多のお赤飯が甘いということは、ほかの地域では、いまだにあまり知られていません。食文化はなによりも興味をもちやすいテーマだと思われるので、地域の食を紹介しあうような交流の場がもっとあれば、高知全体に、おもしろい変化が起こりそうです。
2017-05-02 配信
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