top of page
Vol.35 南の国の冬支度。
 
 山々が赤や黄に色づくころから、冬の保存食づくりがはじまります。冬も青空の南国では、それほど凝ったものは作りません。 それでも晩秋の澄んだ天日に干した野菜は、戻して料理するとじわじわ甘みがでて、代わりのきかない役者となります。さまざまな形の干し大根、里芋やりゅうきゅうの茎を干したズイキ、原木栽培も多い干し椎茸など。そのひなびた姿や味わいは、百年前にもこんなふうだったろうと思わせてくれます。
 
 渋柿は皮をむいて軒先につるし、ときどき手でもんで、きれいに粉を吹いたらなんともうれしいもの。そして買ってまで食べたいのは、干した薩摩芋の甘くねっとりした食感が幸せな、ひがしやま。 もっともこれらは長く置くというより、できあがるそばから、待ちかねた甘党の口へはいってしまうのですが。
 
 干したものばかりではありません。柚子がたくさん手に入れば、果汁を絞って保存用のお酢にしています。この柚(ゆ)の酢は塩を入れておけば1年もち、酢のものやお寿司、青魚の刺し身など気軽に使える上品な酸味です。
 
 ところで、干しものを庭先に広げるのに重宝する、竹を編んだ 「えびら」という道具。昔のものしか残っていないのかと思いきや、いまも高知の竹細工職人さんがつくっています。百年後にも季節の保存食とともに、こうした道具もまた健在でありますように。
 
2013-12-07  配信
bottom of page