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Vol.14 ふるつく
 
 大きな大きなスダジイの樹に、会いました。四万十町窪川の奥まった集落に立っている、樹齢500年を越えるという、通称大ジイ。なんとなく、大爺と読み違えてしまいそうな雰囲気です。樹の近くに住む人と、庭先でしばし話をしたことでした。
 
 スタジイの実は何センチもあって、遠くからも実を拾いに来ること。たくさん実った年は、あまりおいしくないこと。向こうの尾根にあった巨大なヒノキは、今はもう枯れてしまって、根株だけになってしまった。そして、ふるつくのこと。ふるつく、ひさしぶりに聞く言葉です。ふくろうのことを、このあたりではそう呼んでいます。前に聞いたのも、この地で生まれた人からでした。
 
 ふるつく、という響きは、あの鳥の、縦笛のようなくぐもった鳴き方を思わせます。そして、古い樹に棲みつくもの、そんなイメージも漂う、親しみをこめた呼び名。ネズミや何かを獲ってくれる、夜の鳥への。
 
 人の手が届かないスタジイの幹にできた穴に、ふるつくは毎年棲みついて、子育てをするのだそうです。同じ夫婦が毎年やってくるのでしょうか。こんな居心地のよい古民家のような巣は、田舎にもあまりなさそう。今度ふくろうの鳴き声を聞いたら、耳はこう聞いてしまいそうです。ふるつくふるつく、ふるつくと。
 
2010-07-06 配信
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