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Vol.15 だんちく
 
 室戸から足摺まで、高知の海岸にそってどこまでも生えている、背の高い、草のような竹のような、秋にはすすきのような花の咲く、あれは「だんちく」というイネ科の植物です。葮竹、和名をよしたけともいいます。夏はとりわけ緑が濃くて、気が満ちた姿になります。住民はほとんど、そんな名など気に留めていませんが。
 
 だんちくが何かの役に立っているとか、貴重な種類だとか、あれで意外に美しい、そんな話はまだ聞いたことがありません。根っこが若いときは食べられるというひともいるし、あれはとても食べら れないというひともいます。
 
 それでも、だんちくの群れは、海と陸のきわあたりに、ゆらゆらするような細い茎を立て、これまた細長い葉を両側にだらだらと提げて、てっぺんを少しうなだれているのです。
 
 ああ見えて有用な植物なのだったらいいのに、と願ったこともありました。繊維を取れば紙になりそうな気もします。でも、わからなくても、役立たなくてもよいのかもしれません。人気はぜんぜんないけれど、ああやって海辺に細長いラインをつくっているだんちくも、そこにあるべきものなのでしょう。暖かい海の近くにしか生きられない、高知らしさのひとつとして。
 
2010-08-06 配信
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