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Vol.12 種崎にて。
 
 のんびり歩いてみたい町が、高知市の浦戸湾入り口にあります。種崎の町は、浦戸湾の内側に広がる昔ながらの住宅街。太平洋に面した南には樹齢数百年の松並木がたたずむ公園や墓地、浦戸大橋のたもとから堤防に沿って住宅や畑がつづき、北には造船所が建ち並びます。堤防の切れ目に小さな桟橋があって、対岸の御畳瀬(みませ)漁港へ5分で渡してくれる船が出ています。そういえば、あの坂本龍馬も、種崎の親戚や知人宅をたびたび訪ねたのだそうです。
 
 にぎやかだったころはさておき、いまの町のひなびた静けさは、なんともいえず心安らかで、いっそ住んでみたいと思うこともあるほど。猫が安心して飼えそうな町でもあります。かすかな潮の匂いと、さらにかすかな、造船所のほうから運ばれてくる、鉄とペンキの匂い。日傘をくるくる回しながら歩くのが似合うような、古いお屋敷がちらほらと残る町並み。いかにも土佐らしい庭を持つ日本家屋もあれば、和洋がミックスされた洋館風もあります。もっと東の海岸から来たらしい、お団子のような丸石を埋め込ん だ土の塀を眺めるだけでも愉しくて。
 
 なぜかこの種崎には「区」という住所区分があって、バス停から、さりげなくハイカラなテンションで誘いかけます。
 
2010-03-24 配信
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