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Vol.33 夜明けの乳色の光
夏の高南台地で、夜明けを迎える経験をしました。はじめてのことです。ことのほか暑かったこの夏、高知では、ほとんど雨が降りませんでした。日中はカラカラに乾いて、それでいて抜けたような青空ではなく、かすんだような夏の空です。
夜が明けかかって、台地特有の霧がうっすらと立ちこめ、やがて少しずつ晴れてゆきます。あたりは人家も少なく、手入れされた農地が広がっています。太陽が山の上にのぼり、薄い雲を通して光の筋を照らしはじめると、実った稲穂の先が、きらきらと輝き、それに応えました。夜露。たっぷりの夜露が、稲穂のすみずみまで恵みの甘露となって、雨のかわりをしているのです。
鳥の声が交わされはじめ、かそけきパイプオルガンの音が聞こえる ような、はじまりの時間。雲間から照らす幻想的な光が、くっきりと した夏の朝の光になった時、夜露はどこかへ消えているでしょう。そしてまた、暑さにゆらめく夏の一日がはじまります。
同じ高知県に住んでいても、台地の住人以外が、乳色にたゆたう夜明けを見ることは、めったにありません。太平洋の水平線から のぼる朝日も美しいけれど、台地の夜明けが与えてくれる幸せな感覚を体験すれば、朝もやの中で光を受けてきらめいていた夜露のように、澄んだ一粒に戻れるような気がします。
2013-08-31 配信
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