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Vol.48 野路菊ふわりと
11月から12月、人の世が歳末のあれやこれやにかまけているころ、海辺の道ばたや斜面に群れて咲く白い野菊があります。野路の菊、野路菊。その花は近くによって初めて愛しくなるような顔をしていて、葉っぱは丸みをおびて切れこんだ、独特の形をなしています。迷ったとき私は、この葉っぱで見わけるようにしているほど。白い花びらは少しピンクがかったのもあります。
もうひとつ、潮菊という名の黄色い小さな野菊も、海岸線にそって咲いています。こちらは花びらがほとんどなくて、丸いかたまりのようです。なぜだか、潮菊は物部川をはさんで東に、野路菊は西に分布しているという有名な謎があります。その謎がすでにとけたのかどうか、わかりませんが。
植物の不思議は、根づいた土地に適応して、形を変えてしまったり先祖返りをしたりが、動物よりもさっさとできてしまうこと。野路菊も場所によって細やかに変化しているし、ときには山間部にも植えられて不自由のない暮らしをしています。
この冬、桂浜公園へはいる信号のたもとにも、野路菊が群れているのを見ました。それはそれは自然な群れかたで。寒さがきびしくなると姿を消してしまう、ふわりと風に舞う白い群れ。そういえばまだ、あの花の甘い香りを知りません。
2015-12-30 配信
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