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 Vol.50 受けいれる力。 
  

 都会から地方へ移住したり、故郷へ帰るひとが増えている時代の流れ。そのなかにあって、都会から離れた高知も、自然や食、ひとの魅力で移住先に選ばれているようです。何年も何十年も暗いままだった夜道に、ぽつんと、新しい住人を迎えた家の灯りがともっているのは心やすらぐ景色で、ありがたく感じられます。

 高知へ移住するひとの多くは、起業していたり、農業もふくめた自営の仕事を選ぶようです。雇用の場を求めて都会へ出るのとは逆の移動なので、自然とそうなるのでしょう。移住者というのは単調な呼び名ですが、自分の意志で住む場所を選んだひとたち。そして、その思いを受けいれる能力が大きいという意味では、高知はかなりのものです。

 外から来るひとが活力になることを、代々の経験をとおして、身をもって知っているのが土佐・高知。背後は山々によってへだてられ、前には大海原がひろがっているという事情は、いまも昔も変わりません。太古の時代、黒潮の流れにのってきた異国のひとたち。都から落ちてきた知識階級、あるいは各地を遍歴してきた商人や旅人も、この地では、やすやすと受けいれてきました。損得ぬきで受けいれ、交わることで日々の暮らしが楽しいものになっていくことを、ただ期待するだけでなく、知っているから。

2016-08-02 配信

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