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Vol.44 お客にゆけば。
「お客」、高知でいう宴会には、お酒のマナーがしっかりと受け継がれています。会場が民家であれば、ふすまを取っぱらって空間を思いきり広げ、折りたたみ式のテーブルを細長く並べ、両側から皿鉢を囲むかたちに。皿鉢は「さわち」と書かれますが、発音は「さあち」がふつうで、「お」をつけて「おさあち」と呼ぶのがていねいです。
お客では女性が席を立たなくてよいように、すべての料理を一枚に盛っているのだといわれています。でも幕があがってしばらくすれば、皆がお銚子と杯をもって席をはなれ、あとは献杯や返杯で差しつ差されつのコミュニケーション。自分の席などはなくなり、いっこう意に介しません。
上下関係の強い会合であっても、バイキング式の皿鉢が出れば無礼講となり、お酒を目下からつぎにいくのがむしろ作法ともいえます。ついでもらったお酒は、杯を下へ置かずに、まず口をつけること。それを私が知ったのは、お酒が飲める年齢をずいぶん過ぎてからでした。幼いころからお客になじんでいるというのに。
そして翌日から、「お客のお客」たちは、すっかり相手を受けいれられる関係に変わっています。私はいつも思うのです。土佐の坂本龍馬さんは、お客の達人であったにちがいないと。
2015-03-18 配信
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