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Vol.27 清らなる流れ。
山からわきだして太平洋に注いでいる、なまえも知らない小さな流れ。その流れにそって上流へ何キロかを歩きました。夏でも涼しい、森林浴の小道。50年も前、開拓にはいった数家族が町へ降りてしまってからは、住むひともいません。そこをでるときに植えていった杉の木立が石垣にふちどられた段々に並び、棚田や家があった場所を教えてくれています。苔むした炭窯も、いくつか。
道ばたで、野生のお茶の木を見つけました。くっきりと濃い緑の葉をしています。これを枝ごと、さっとあぶり、鍋で水から数分煮ると、野性味のあるお茶が楽しめる…高知の昔ながらの、あぶり茶です。
流れにそって奥へ数キロつづいている小道は、ときおり川を渡ります。ちゃんとした橋はなく、古い丸太の橋があったり、石を伝って歩いたり。雨の翌日だというのに、山から流れてくる水は澄みきって、上流が照葉樹の豊かな森であることを想いました。
冷たい水を手のひらに受けて、のどをうるおします。目には見えない山の気が、とけこんでいる水のやわらかさ。ここは地図になまえも載らないような、きっとそのぶん、とてつもなく清浄な場所。道に降り敷い た落ち葉は何年ものミネラルをためています。この水が土佐湾に流れでて、太平洋の青にとけ、海を育ててくれるという、夢のようなほんとうの話。いつまでも、休むことなく。
2012-07-10 配信
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