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Vol.2 草に聞いて。
 
 2月も終わりになると、もう春先めいてきました。でもほんとうに 春を感じるのは、耕された農地の湿った匂いを、西風がふうっと鼻先へ吹いてきたとき。それはさすがの南国でも、もう少し先のことになります。まだまだ畑も田んぼも、白っぽい枯れ草だらけ。と思いながら地面を探すと、そこかしこに、緑の先やり(先に立ってものごとを進める世話人さん)が顔を出していました。
 
 道ばたや建物のきわに沿って伸びる、細い緑の帯。高いところに咲く梅の花ばかり愛でていたけれど、小さいものたちは地面のそばで目ざめ、早くも紫の花をつけているひと群もあります。草のかたまりをしばらく眺めていると、雑草のように生きるとか、そういういわれ方をする人になりたいと思ったり。
 
 うちの猫が好んで食べる草は、イネ科の草です。シバの類やスズメノテッポウ、エノコログサ。今は姿が見えないものの、新年にはまだありました。薄くとがったやわらかい緑の葉は、猫の口にちょうど良いのでしょう。
 
 うっすらと徐々に生えてくるというより、かたまってぎゅっと生えて、そんな緑の島がひと雨ごとにつながっていく、春の広がり方。人が何かに動かされて寄り集まってゆく様子もこういうことなのだろうかと、先やりたちに敬意を表します。
 
2009-02-27  配信
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