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Vol.4 カタバミの旗のもとに。
 
 過去に起こったできごとのかけらを探し、つなぎあわせてゆくと、考古学者や歴史家の味わう感動にも似た発見が待っています。ずっと 身近な場所に存在していた、そして知っておくべきだった、それなのに私の目には埋もれて見えなかった事実が。
 
 高知市の玄関口、浦戸にはかつて賑わった港があり、桂浜の山の上には三層の天守閣を誇る城がありました。城を築いたのは、戦国末期に四国を平定した長宗我部元親です。元親が初陣で武勲を立てた戦場は、浦戸からほど近い長浜にあります。私にとって生活圏と言える場所にその史跡があると知り、訪ねたのはごく最近のことでした。
 
 古墳也と刻んである石碑のそばには、ムラサキカタバミがピンクの花を咲かせていました。子どものころ、茎の芯だけ残して葉を絡め、草相撲を取ったり、花の茎を吸ったりして遊んだ草。ムラサキカタバミは江戸末期に入ってきた種類ですが、黄色い花をつけるカタバミも同じハート型の葉をしています。この葉を七つ並べて丸く図案化したのが、長宗我部家の家紋です。ありふれた雑草を旗印として、小さな土佐駒にまたがり、侍であり百姓でもある一領具足たちを引き連れて遠征した長宗我部軍は、カタバミと同じく土佐の大地に根ざしながら、乱世を駆けていったことでしょう。
 
2009-05-29  配信
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