top of page
Vol.25 北の国と南の国。
 
  高知の平野部には、めったに雪が降りません。でも、四国のほとんどを占めている四国山地は、西日本最高峰の石鎚山もかかえているだけあって、険しい山のかたまりです。そこでは南国高知とはいえ、冬が長く、雪が舞い、たびたび雪が積もります。
 
 晴れて風のおだやかな冬の日、高速道路のトンネルを抜けて麗北地域へ行ったり、標高の高い山間部をたずねると、粉糖をまぶしたような白い世界に、しばしば驚かされます。さっきまでいた沿岸部の、青い空やひだまりはどこにもなく、空は山々にかかる雪雲でぼやけ、空気は静かに澄ん でいて、遠くはるかな北国へ来たように思えるのです。沿岸の平野部も夜は氷点下まで冷え込むけれど、山間部との大きな違いは、昼のあいだ、日によっては気温が10℃以上も上がってしまうほど、昼と夜の温度差が大きいことでしょう。
 
 高知には、山に暮らす人と、海辺に暮らす人がいます。それぞれに高知らしさがあって、ひとつではありません。ただ、話を聞いたり、生活の様子を見せてもらったりするうち、不思議と山の人たちへの共感が、じわじわと広がっていくのです。私が海辺の人間だからでしょうか。海辺の暮らしが一日を生ききることであるとするなら、山の人の暮らしは、今日を明日へとつないでゆくこと、なのかもしれません。
 
2012-02-17  配信
bottom of page