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Vol.40 酢みかん
 
 夏の終わりから暮れにかけて、高知では「酢みかん」とよばれる調味用の柑橘が、さまざま出まわります。ぶしゅかん(仏手柑と書くけれど、九州のそれとはちがうもの)、直七、青い柚子、すだち、最後には黄色い柚子。たっぷりと魚にかけたり、お酢がわりに酢のものへ米酢などと一緒に使ったりしています。一緒にといっても、酢みかんの割合がずっと多いのですが。
 
 柚子の果汁は「柚(ゆ)の酢」といって、料理をする家庭では常備しているもの。柚子は柚子風呂にするよりも、お酢として使われています。塩をいれた柚の酢は翌年の収穫まで保存できるので、切れることがありません。
 
 それにしても。酢みかんとは言い得て妙な言葉です。文旦や小夏をつくる農家が、「みかん」と呼ぶのを聞いて、ああなるほどと思いました。温州みかんだけが、みかんではないのだと。柚子もみかん、だけど食べるみかんと区別して、酢みかん。酢みかんの発音は、「か」を高くします。「ん」を跳ねさせて「かん」と終われば、ネイティブです。
 
 新鮮きわまる魚にこと欠かない海の近くでは、焼き魚にたっぷりかけたり、青魚などのお刺身にも醤油と一緒にふりかけます。鰹のたたきのタレにもはいります。酢みかんの季節のはじまりはぶしゅかんで、やわらかさのある酸味が、暑さに疲れたからだにしみこみ、食欲がでます。そして冬を迎えるころには格別な酸味の柚子が、ここちよく感じられます。
 
 
2014-09-20 配信
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