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Vol.17 工場愛。
産業遺産巡りとか、萌え工場系とか、呼び方はいろいろ。石灰岩からセメントを作る工場や、変電所、鉄工所、造船所といった建物群、その内部を見てみたいと請い願ってしまう癖を持つ人、少なからずいるのではないでしょうか。
近くにいれば、工場独特の音や臭いがしていたり、煙が勢いよく出ていたりもしますが、ちょっと離れたところからだと、人工的な動きは消されてしまいます。鉄塔やエントツ、灰色の壁と、並ぶ屋根。整然としたモダンさよりも、ランダムに少しずつ増設していったような工場。そのたたずまいに、何を思ってか、惹き寄せられるのです。
海沿いの造船所やセメント工場は、高知の風景としてはおなじみのものでしょう。いつもそこにあるけれど、同時にそこは遠い世界への入り口でもあって、この片思いは当分つづきそうです。エコツアーで農業体験をしたりするように、大人のための工場見学が高知にもあれば、うれしいのですが。
ただ、遠くからでないと味わえない美しさもあります。とりわけ、黄昏時、薄暮のころ。工場に灯る光の点が、夕空の星と呼びあうようにまたたき始めると、この時が止まってしまえば、とばかりに眺めていたくてなりません。この手を離れた懐かしいものを見るように。
2010-10-27 配信
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